戦略計画
計画とターゲットで非常に重要な部分となるのが「戦略計画」という主題です。 この主題は、「戦略」という言葉の定義、戦略計画がどのように「経営」の他の領域と連係するかを含め、詳細に扱う必要があります。
「戦略(strategy)」という言葉は、軍隊を導き、それに指示を与え、兵隊が何をするかを決定する「将軍」を意味するギリシャ語「strategos」に由来しています。 「strategos」という言葉自体は、「stratos」(ギリシャ語で「軍隊」を意味する)という言葉と「agein」(ギリシャ語で「導く」を意味する)言葉からつくられています。
「戦略」とは、戦争やその一部でどのように軍隊に指示するかの計画として定義されています。
このもともとの意味から、「戦略」にはまた、特定のゴールや結果を得るために活動に指示を与える計画や手段という意味もあります。
これが、グループや会社の高い階層で、その指導者や役員によってなされる計画の種類です。 彼らは活動全体の幅広い視点を持つ人たちで、そのため、グループ全体に対する戦略を打ち出すことができます。
戦略は、グループが大きなものを成し遂げるための計画を定めます。 また、結果を得るために、資源(資金、従業員、設備、供給品など)の賢い使用法、敵を阻止する手段、存在する障害を乗り越える手段も示します。
戦略はグループの高い階層で考え出されるため、それは中央戦略であり、傘下の活動すべてを扱うことになります。
これが戦略計画というものです。
その働き
戦略計画は、グループのより下の階層すべての活動に指示を与えます。 より下の階層には彼らの独自の計画、 およびプログラムとプロジェクトがあります。 それらは、より小さな領域が対処しなくてはならないものを取り上げ、これらのより小さな計画が主要なゴールの達成を助けるために調整されます。
このことから、なぜ戦略計画がそれほどの重要性を持っているのか、そして経営の有効性と成功を目指すなら、なぜより上層の計画策定機関で行う必要があるのかの理由がわかります。
では、戦略計画がなかったら、何が起こるのでしょうか? ええ、戦争中に全く戦略計画が立てられなかったら、どのような事態になるのでしょうか?
兵隊は重要な領域で戦っているかもしれません。例えば、川を渡る最も簡単な道筋である橋の支配力を保とうとしていたり、多くの敵兵に囲まれた領域にいるかもしれません。 これらの兵隊は、他の兵隊から離れ、補給の支援も得られずに孤立することもあります。 同時に、他の兵隊は主戦場から遠く離れたところで戦っているため、彼らの助けは必要なところには届きません。 補給品や武器は見当違いのところに移動されたり、全く送られないこともあります。 結果、命令は互いの障害となり、コミュニケーションは送られるべきところには送られず、資源(兵士、補給品、弾薬など)は無駄になり、戦いは敗れることになります。 計画もなく、さまざまな部署の間での調整も存在しなければ、すべては混乱し、無秩序に陥り、大惨事へと向かっていきます。
ゴールの達成に向けて、しっかりと調整されて積極的に突き進むのとは、何たる違いでしょう!
これで、戦略がグループでどのように機能し、なぜ上層部でなされなければならないのかがわかるでしょう。 ここでのキーワードは、「完了」です。 なおざりにしたり、途中でやめることはできません。 それが実際に行われている証拠を見ることなく、行われているはずだと考えることはできません。 戦略計画は完了されなければならず、少なくともすぐ下の階層の経営部に知らされる必要があります。 そうすれば、調整が行われ、正しいターゲットの設定を行うことができます。
目的と戦略計画
戦略計画はまず、処理すべき状況や到達すべきゴールに注意を向けることから始まります。 それには常に達成すべき目的が含まれます。
いったん目的が割り出されたら、その目的に基づいてさまざまな戦略計画を書き上げることができます。
例えば、コミュニティー・グループが町の人々にアンケート調査を行い、多くの人にとっての問題が、その領域における高い失業率であることがわかるとしましょう。 グループはそれを処理すると決め、この目的を心に留め、その領域により多くの職をもたらすことを含む戦略計画を考えます。 その地域の人たちが新しい技能を学べるように、成人向け教育の拡大と改善のための計画も盛り込みます。
まず、コミュニティー・グループの何人かのメンバーは、従業員を探している会社と、仕事を探しているそのコミュニティーの人々との間の集会を組織化します。 教育関係のターゲットとして、このコミュニティー・グループの他のメンバーはさまざまな授業やトレーニング・プログラムを調べ、それらをコミュニティーにもたらします。 この計画のこれらのステップや他の行為はすべて、この町に雇用状況の改善を促し、現存の光景(現在存在している物事の様子)に向上がもたらされます。
実際、戦略とは、いかに効果的かつ迅速に目的を、へま(間違いや誤り)を犯すことなく実際の物質宇宙の中で推し進めていくか、ということであると言えます。
どのような戦略計画にも複数の主要な行為を含めることができ、その目的を達成するために、グループの別の人員によって処理されることになります。 これは最初に立てられた全体的な計画の表明であるため、極めて一般的な言い方で表されます。 それらから、より小さく、より短期的な計画を展開することができます。 とはいえ、すべては互いに連係が取られていなければなりません。
例:
解決すべき問題:ABC製紙会社は成功している紙製品シリーズが常にあり、これらを継続的に生産している。 しかし、これは既存の顧客のみに対処している。 これによって新しい顧客を得る可能性はない。 結果として、会社は急速に破産に向かっており、役員たちは将来性のある(会社やビジネスの生産量や仕事の種類が増加している)他の会社で働くために離職している。
目的:すべての仕事を行い、従来製品および新製品の高い販売をもたらすために、可能な限りのすべての顧客(既存と新規の顧客)にリーチする製紙会社をそこに置くこと。 会社はこれまでの顧客に対処し、会社の資金を増やすためにさらに販売を行う。 これらすべての行為を通して、継続的に成長し、将来性があり、確実に収入を上げている、成功したビジネスとしての会社の評判(何かに対して人々が持っている意見)を築く。
戦略計画:対処しなければならない状況と定められた目的を踏まえて、戦略計画はおよそ次のようなものになります。
1. 破産を食い止めるために最も重要な行為は、新しい販売ユニットを始めることです。 ただし、現在なされている販売活動を止めることなく、また会社のどのセクションも廃止することなくこれを行わなくてはなりません。 新しい販売ユニットはまず、現行の製品シリーズに対する新しい顧客を以下から見付けます。(a)紙製品を販売する小売店、(b)小売店に紙製品を販売する大企業、(c)通信販売(人々が欲しいものを通常カタログから選んで、それを郵便で送る販売方法)。 優れた生産記録(特定の仕事でどれだけ生産したかを示す報告)を持っている販売経験のある販売代理人を雇用して、これらの各セクションを運営させる必要があるでしょう。 他の多くのプロの販売代理人を見付ける必要もあるでしょう。 この人たちは低い基本給で雇用され、給料のほとんどは歩合給(その人がどれだけ販売したかで支払われる追加の報酬)にすることができます。 これらの販売活動はその後拡大し、領域ごとのマネージャー、他の販売代理人を始めさせる販売代理人、さらに訪問販売代理人も雇用して、より大きな領域に広げることができます。 この計画の一部として、歩合制と販売キットを考え出す必要があり、同時に、ビラ、コマーシャル、無料サンプルなどといった製品を宣伝し、知らしめるものも考え出します。 素早く売り上げを上げるために、またこれ以上の喪失を起こすことなく、さらに会社の収益を増加させるために、これらすべてが直ちに行われなければなりません。
2. 上記のステップが行われている間、既存のスタッフによる販売と生産記録を見直す必要があります。 会社は生産的な人だけを抱えるように、生産的でない社員は解雇します。 収入と経費に関する会計記録を調べる必要があり、盗難が起こっていることが示されている場合には、適切な法的措置をもって処理される必要があります。 言い換えると、生産を増加させている間に、現在の社員および生産者が完全に見直され、必要に応じて修正されなければならない、ということです。
3. 既存の顧客と潜在的な新規の顧客に対してアンケート調査を行い、どのような新しい紙製品が求められていて、買いたいと思っているのかを見付け出します。 このアンケート調査の結果に基づき、全く新しい種類の紙製品シリーズの開発、生産、およびたくさんの領域での宣伝、販売を行うことができます。 新製品シリーズを確立するプログラムには、新たに必要となる追加の機械や設備とともに、新しい(役員、デザイナー、追加人員を含む)生産ユニットの組織化も含める必要があるでしょう。 プログラムにはまた、広報活動(グループとそのグループの外にいる人たちとの友好的な感情を保ち、それを向上させる活動)に対処するターゲットも含める必要があります。 また、それには新旧の製品を宣伝し、両方のシリーズの売り上げを高めるために行わなければならないことも含めるべきです。 この計画はまた、その会社が常に新しい紙製品を開発するリーダー的存在であることを知らしめる方法も含めることになります。そうして、将来性のある拡張を求める役員たちがやって来ることになります。
このような戦略計画は、その会社のひどい状態を修正します。 また会社全体の未来に向けた、高い収益、拡張する光景を創造します。
この戦略計画から、戦術計画が行われることになります。 「戦術計画」とは、戦略計画を実行させるために、広範な戦略ターゲットを取り上げ、それらを精密で的確なターゲットとして定められた多くのより小さな行動に変換することです。
そこでは多くの人々がこれに取り組むことになるため、全員がこの目的を理解し、これらの計画に同意しなければなりません。 そのような計画を読んでいる人は、会社の中に存在している状況と、戦略計画が処理することになっている全般的な目的を理解していなければ、その重要性はわからないかもしれません。 これによって、彼らは戦術計画を練ることができます。
戦略計画の戦術的な実行において、戦術ターゲットの一部を変える、あるいは新たなものを追加する必要があることが明らかになるというのは、かなり一般的なことです。 いくつかのターゲットを、必要がないということでプログラムから削らなければならないこともあります。 戦略計画の戦術的な経営には、これを考慮に入れられるように、技能と理解が求められます。
上記の説明は、優れた目的を始めとして(その目的に対してさまざまな行動が調整される)、戦略計画を展開するための行為の順番が示されています。 それから、目的を達成するために必要な戦略的な行為を考え出すことができます。 最終的に、戦略計画をもたらすための戦術計画がそれに続きます。
このようにして、グループは栄え、成功することができます。 すべての強さと力が足並みを揃えてひとつの推進力となる時、とてつもない力を発揮することができるわけです。
ですから、目的を明言し、そこから目的を達成するために使われる戦略が打ち出されることになります。 これによって、目的が戦術計画の領域につながります。
戦略計画がその目的とともに打ち出されると、すぐ下の指揮階層がそれを取り上げ、戦術計画へと変換させます。
戦略計画 対 戦術計画
戦略は、戦術とは異なるものです。
これは、経営部の各レベルがはっきりと認識しておかなければならない点です。
戦略計画と戦術計画との間にはとても、とても大きな違いがあります。
戦術計画が小さなもの、例えば、ひとつの戦闘に勝利をもたらすために用いられるのに対し、戦略計画は全体の戦争に勝利をもたらすために用いられます。
戦略計画が勝利を確実にするための大規模で長期的な計画であるのに対し、戦術計画は、誰が何をどこに動かし、その時点で何をすべきかを綿密に示したものです。
戦術計画は、戦略計画に対して調整され、それを達成しなければなりません。 そしてそれは、緻密(ちみつ)で実行可能なターゲットに関係しています。
基本的に、それが経営です。
目的と戦術の橋渡しをする
トレーニングを受けていない人がよく犯す誤りは、戦略計画を飛び越えて、目的から一足飛びに戦術計画に移ることです。 これはうまく行きません。というのも、戦略計画を成功させるには、戦術計画は戦略計画に対して整合性が取れていなければならないからです。
ここで理解しなければならないのは、戦略計画が戦術計画を生み出すということです。 戦略は、目的を達成できるように考え出されなければなりません。 その戦略に基づいて、その戦略を実行するために行う必要のある戦術的な行為が決まります。 それなのに、戦略を無視して、目的から戦術へと飛んでしまうと、その計画は望まれた結果を達成することはありません。
ですから、目的と戦術との間には、常に戦略計画という段階があるのです。 戦略計画とは、目的そのものを機能させる手段だと言えるでしょう。
それは実際、賢くなること(知的で、優れた考えを持つこと)に関係しているのです。
人は目的を十分に認識していて、それに関係する多くの戦術ターゲットを思い付くかもしれません。 ひょっとすると、それらのターゲットだけででうまく行くかもしれません。 けれども、その目的は何かを処理することになっているのです。 ですから、これを行うための戦略的な手段がなければ、その同じ問題が存在し続けることにもなり得ます。
実際に目的と戦術との間に橋を架けること(戦略)は、その目的を成功できるようにすることなのです。