計画を実現させる
人やグループがゴールに到達するために、まず知らなければならないのが組織化についての基本です。 「組織化」とは、人やグループが欲しているものをもたらすために、物事や行為を手配することを意味します。
組織化について単純に言うと、その目的は計画を実現させることだ、ということです。 「実現させる」とは、人の想像の中にだけ存在するものではない、現実の何かです。
組織化は、目的のない空想のシステムではありません。それでは官僚主義です。 「官僚主義」とは、グループ内にある規則や手順の複雑なシステムで、人々が責任回避するのを許し、物事を成し遂げるのを妨げるものです。 人々はこのようなグループや政府をなくそうとしています。というのも、それらは生産をしようとする人たちの邪魔をする、生産の低下、高い税金、多くの制限といったものをもたらすからです。
組織化はまた、単にある人が他の人々よりも重要になろうとするための手段でもありません。 それが起こると、生産を増やすために正直に活動を組織化しようとしている人々を締め出すことにもなりかねません。
そうではなく、有用で、長続きするためには、組織は計画を実現させるという上記の定義と噛み合っていなければなりません。
グループや組織の極めて邪悪な指導者には、そのグループ、組織、政府機関にいる他の誰もが自分たちの領域の改善を望んでいるのに、人々のための改善を望んでいない人もいます。 そのような改善の例には、生きていく上での、あるいは仕事においての、より多くの食物、より多くの給料、より良い建物が含まれます。 実際、「改善・向上」とは、人が自分自身や家族にとって良いとか助けになるだろうと考えるものよりも多いこと、また、良いことです。例えば、より良い教育、より良い仕事、住んでいるところのよりきれいな近隣地域、子供が遊ぶのにより優れた公園などのことです。 これにはまた、一般に好ましくないと考えられているもの、例えば、戦争、犯罪、薬物などがより少ないということも含まれます。
大半の人々が承認し、支援するプログラムは、より多くの良いものとより少ない好ましくないものから構成されています。 「より多くの食物、より少ない病」、「より多くのきれいな建物、より少ない粗末な家」、「より多くの余暇、より少ない労働」、「より多くの良い仕事、より少ない失業」といったものは、価値があり、支持されるプログラムの典型です。
しかし、プログラムを持っているだけでは、依然として失敗を意味します。 多種多様な理由から、プログラムは人々のゴールに到達するのに失敗する可能性があります。 プログラムが大き過ぎる。 全般的に望ましいと思えない。 全く必要とされていない。 限られた少数の人しか恩恵を受けない。 これらが、プログラムが完了されない理由のようです。 しかし実際の理由は、組織化のノウハウの欠如です。
たとえプログラムが大き過ぎたとしても、何人かに受け入れられるだけのものだったとしても、または、たとえそれが必要とされていなかったとしても、それでも行うことはできます。 適切に組織化されていれば、どのようなプログラムでも行うことができ、然るべきものをもたらすことは可能です。
人の夢だけでは十分ではない、ということではありません。 それは、人が自分の夢を実現するために、必要なノウハウすべてを必ずしも持っているわけではない、ということなのです。
優れた管理運営(会社や組織、あるいは特定の活動を管理、あるいは組織化する際に関わる活動)をもたらすために、処理しなければならないものは以下の通りです。
1. 既存の会社や国を進め続けること。
2. 計画を実現させること。
土地や人、設備など、グループや組織、あるいは国の基本的な構成要素が存在するのであれば、これを維持するだけでも管理運営のシステムが必要です。
ですから、上記の(1)と(2)は実際のところ、(2)だけになります。つまり、計画を実現させることです。 立てなければならない計画は、既存の会社や国を進め続けるためのものです。 企業も国家も、人々がそれに取り組んでそこに置き続けない限り、存続しません。 ですから、どれほど単純で基本的であろうと、グループを推し進め続けるには管理運営の方法が必要なのです。
管理運営のシステム全体が失われたり、忘れ去られたりすると(例えば、戦争や政権交代によって起こり得ることですが)、そこに他の種類の管理運営が生じなければ、グループは崩壊する可能性があります。
課の長や経営者、また支配者でさえ、彼らが交代することでその一部または全体が崩壊してしまうことがあります。というのは、グループの古いシステムが知られなくなったり、忘れ去られてしまうからです。 以前のシステムはもはや使われていないのに、新しいシステムが理解されていないかもしれません。 頻繁な人事異動(ひとつの仕事から別の仕事へと人を変えること)を企業や国家の中で続けることで、グループ全体を小さなままに留め、無秩序で、混乱した状態にしてしまうこともあります。 こうした人事異動は、そこにどのような管理運営が存在していたとしても、それを崩壊させてしまうからです。
これらの理由から、組織化という基本的な主題を知ることは必要不可欠なことなのです。
たとえグループが脅威となっている何らかの災害からグループ自体を守っているだけだったとしても、そのグループは依然として計画を立てなければなりません。 例えば、強力な嵐が町に向かっているとしましょう。そのため、町の指導者たちは人々が安全でいられるように計画を立てなければなりません。 いったん計画が準備されたら、嵐が治まるまで人々が泊まれる学校や教会を開くか、ラジオ放送で数日間その領域から出るように伝えます。
計画によっては、とても単純なものになります。 敵兵が要塞(中にいる人たちや兵士たちを守るための強力な壁のある大きな建物)を攻撃している際の例を見てみましょう。 要塞は守られなければならないので、たとえそれが、「南の城壁を登ってくる敵兵を押す戻す」というだけのものであったとしても、計画を立て、それを実行しなければなりません。
そのような命令は、非常に単純で素早い観察と計画の結果出されたものです。 南の城壁の防御は、特定の管理運営システムによって起こります。たとえそれが、将校が命令を受け、部下たちを南の城壁へ差し向けるだけのものであってもです。
大きな負債を抱えた会社も同様に計画を立てなければなりません。 その計画は、負債を抱えている相手にどのように支払いを行うかを解決しなければなりません。 それから、その人たちにいつまでに返済するかを伝える方法を考え出さなくてはなりません。 こうした計画が、十分なお金をつくるために必要な時間の猶予を会社に与えることになります。
政府の指導者たちは、素晴らしいことをする、と頻繁に公約します。 けれども、それらは起こりません。ほとんどの人がそう思っていますが、この指導者たちは公約の実行を避けようとか、人々に嘘をつこうとしているわけではありません。 彼らはその公約を実行に移せないのではありません。その公約があまりにも大きいからではありません。そうではなく、ほとんどの政府の指導者が政府については何かを知っているかもしれませんが、管理運営についてはほとんど知らないからなのです。 つまり、彼らはそれらの計画を実現させるための組織的なノウハウを持っていないのです。
素晴らしい夢を見るだけで十分な人もいます。 その夢を見たというだけで、その人は、今それが現実に起こるべきだと感じます。 そしてそれが現実に起こらないと、ひどく動揺します。 たくさんの国家や企業、またグループも、その基本的な夢や計画が現実のものになったことは一度もないのですから、その領域は混乱し、無秩序な状態のまま、何年もの間存在してきた、ということです。
例えば、人が自分の住む町にもっと多くの仕事、もっとたくさんのお金をもたらすといった大きなゴールを計画していようと、家のペンキの塗り直しといった小さなゴールを計画していようと、管理運営上のノウハウが欠けていたら、その計画で必要になるものを達成することはありません。
たとえ技術的な詳細を知らなかったとしても、あるいは必要な金策ができなかったとしても、他の人たちを命令に従わせることができなかったとしても、たとえ彼の計画があまり明確ではなく、よく考えられていないものだったとしても、こうしたことは計画と現実の間に立ちはだかる真の障壁ではありません。